ゴン太郎 no 介護!

25年間での介護福祉士・ケアマネジャー・施設リスクマネジャーの経験を通して培った専門的知識・経験や持論を基に介護の情報を発信していきます。ご家庭で業務や施設教育に役立てて下さい。

アラサー男性が積み上げてきた超現実的な在宅介護マニュアル『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』奥村シンゴ

 今回は奥村シンゴさんの著書『おばあちゃんは、ぼくがかいごします。』を紹介します。

本書は一般の30代の青年が在宅介護の世界に飛び込み、実際に祖母の介護に関わる中で培った視点から積み上げてきた情報の数々が包み隠さず紹介されています。

本書の特徴は、介護初心者が在宅介護に挑むにあたり どんな事を思い・どんな所に躓きを感じるかを知るだけでなく その疑問点の一つ一つを独自の視点で調べ上げ答えを導き出している点にあると思います。

実際に介護に携わる家族に寄り添った知識が書かれており説明も介護初心者でも分かり易く、実際に在宅介護に踏み出すにあたり不安な方は基より 介護に不安を抱えた家族に寄り添った考えを深める上で介護従事者にも参考になる一冊だと感じました。

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 この本の説明

Amazon紹介欄

 ●30代男性、6年以上にわたる孫介護奮闘記&介護者のための一般実用情報
介護の担い手がなく、やむを得ず祖母の世話をすることになった30代男性による孫介護奮闘記。独身男性による介護は「ひきこもり」「退職による経済的な困窮」など、「8050問題」を生みがちですが、それをも超えた「8030介護」の実践、試行錯誤でつかんだ目からウロコの介護手法。おばあちゃんとの珍妙なやりとりの数々に共感を覚えます。
著者は在宅介護をしながらもwebによる情報発信に活路を見いだし、その独自の視点と行動で、経済的な安定(庶民目線で伝える介護に必要な金銭的な部分)を図りながら祖母の介護を全うした実話は、同様の介護に携わる人への情報提供となります。また新型コロナウイルス発生以降の課題となっている新しい生活様式にともなう、新しい介護の方法も提案します。


1痛快でユニーク、ヒント満載の「8030介護」
30代前半の男性が親以外(祖母)の在宅介護を6年、施設介護2年計8年を経験中という独自の視点。 増加している若年・中年層の介護者へのヒントとなります。


2今、課題とされているコロナなどの感染症対策を介護者の視点で解説
最後の章で感染症への対処法を解説。感染症全般の対処法になりますが、新型コロナウイルス発生以降の課題となっている新しい生活様式にともなう、新しい介護の方法を提案します。


3祖母を介護したエッセイとともに、実用情報もあわせて紹介
エッセイの文章の流れに沿った実用情報を随所に挿入。話に関連する実用情報を併記し、読者のお役立ちとなる紙面展開を行います。

 

書内著者紹介欄

奥村シンゴ

1979年、兵庫県生まれ。神戸学院大学法学部法律学科卒業後、株式会社CSKマーケティング(現在、SCSK株式会社)で放送・通信業界の営業職などを経験。32歳から祖母の介護をはじめ、2020年現在8年目。「孫介護」「アラサー介護」などをテーマにテレビやラジオなどのメディア出演や講演で活躍中。介護専門誌『認知症ケア』『みんなの介護』(いずれも日創研)は連載3年目。このほか週刊誌やWEBメディアでこれまで400記事超連載。2020年1月『ほんまやで~新聞』(YouTubeチャンネル)編集長就任。

 

この本を読んでみて

内容構成

30歳未満で親や祖父母の介護を行っている人を ”ヤングケアラー” と呼び、30~50歳未満の同様の介護者を一部では ”ミドルケアラー” と呼ばれているそうですが、本書では後者の”ミドルケアラー”である著者の話しが書かれています。

 

 第1章 ”ミドルケアラーが孫介護するに至った経緯”

母親が突然脳梗塞に祖母が認知症に発症したところから著者の介護に携わる生活の話が始まります。

妹も弟も結婚し家庭を持っており自分だけ独身だった事や兄弟の中で自分が特に可愛がられていたエピソード・母親と祖母が不仲だったエピソードなどの経緯を交え家系図も持ち寄り 祖母の介護を娘である母親や弟・妹でなく長男の奥村シンゴ氏 単独で介護するに至ったのかを書かれています。

又、補足資料として

  • アルツハイマー認知症の症状の進行”
  • ”要介護度によって使えるサービスの上限額(月)”
  • ”よく見られる認知症の症状と対処のしかた”
  • ”介護サービスが受けられる高齢者の住み替え先”

が載っており、介護ビギナーでも分かる視点での内容になってました。

 

第2章 ”ミドルケアラーが在宅介護をするために覚悟するべきこと” 

介護の経験を経る前と後を比較して、仕事や交友関係・日常生活面などの ”生活の話し” や 生活費や介護保険の支給額などの ”お金の話し” など身近な変化につて介護初心者でも分かり易い目線で丁寧に書かれていました。

又、補足資料として

  • ”お泊まりデイの説明”
  • ”高額介護サービス費のあらまし”

 を紹介されていました。

 

第3章 ”在宅介護ハプニング集”

  ”サービストラブルの受け手目線での見解” や ”職員に恋をした祖母の話し””食忘れの対応エピソード”地震経験談 など在宅介護を長年続けていく中で筆者が体験した失敗談やハプニングエピソードが書かれていました。

又、補足資料として

  • ”小規模多機能型施設とは?”

 を紹介されていました。

 

第4章 ”ミドルケアラーが在宅介護を無理なく続けるコツ” 

 祖母の介護を続けてきた中で著者が見つけ考え出した『GWや年末年始に少し長めの休暇を取る方法』『要介護認定のちょっとしたコツ』在宅ワークのススメ』などの裏情報や裏技が書かれていました。

又、補足資料として

  • ”自己負担額1~3割の所得のめやす”
  • ”介護認定を受ける4つのポイント”

 を紹介されていました。

 

第5章 ”ミドルケアラーが在宅介護で知っておいて損はないこと” 

第4章に続き ”知っておいて損はないこと”と題し『家族介護慰労金『要介護度と介護負担はイコールではない事』『夏バテ防止法』など筆者が介護生活を送る中で知り得たプチ情報を紹介されていました。

 

第6章 ”新型コロナで介護者ができること” 

 最後に『新型コロナ下での生活やサービス利用の注意点』『新型コロナの感染が疑われた際の対処法』など新型コロナウイルス下での認知症の介護者が ”知っとくべき知識” や ”とるべき行動” を筆者の実際生活する中での情報や対策を紹介されていました。

又、補足資料として

 を紹介されていました。

 

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おすすめポイント

ポイント①『素人目線でも分かり易い』

”よく見られる認知症の症状の対処の仕方” などでは ”食忘れ” や ”取られ妄想” などよくある4つの症状の発生理由と簡単な対処方法の説明がされており 経済的な話では共同通信社の調査情報と共に目安として自分の生活と照らし合わせ ”自己負担額を超えた時の払い戻し制度” や ”確定申告時の還付金制度” など加えて説明されていました。

 

どの内容もやさしく書かれており、必要な情報を盛り込み過ぎず噛砕いて説明がなされており介護初心者にはとても分かり易く最初に手にする情報としては手頃なのではないかと思いました。

 

ポイント②『シンプルに現実的』

 一個人の介護の流れを基に話が構成されており ”どういう手順で進み” ”どういう問題が発生する” などイメージがつきやすく 又、30代のミドルケアラーからみる視点からの ”介護生活面” や ”介護の問題点” の分析で情報を合理的に捉えて紹介しており とてもシンプルで現実的でした。

 

ポイント③『図やマンガも取り入れており、読み易い』

 補足説明として ”支給限度額と その介護度で使えるサービスめやす” などの表や図 認知行動を表したマンガ など文章だけでなく様々な補足で読み易くなっていました。

 

まとめ

筆者の介護を始める切っ掛けからスタートし その時々での問題点や必要な情報を掘り下げ過ぎず丁寧で分かり易い形で説明する流れの構成になっており、介護の世界に飛び込まれた方が最初に手に取り参考にするには とても手頃な本だと感じました。

専門職でも介護の世界に飛び込まれた家族への説明の参考にも役立つ 読んで損はない一冊ではないかと思いました。

 

今回紹介した本はこちらです。