ゴン太郎 no 介護!

25年間での介護福祉士・ケアマネジャー・施設リスクマネジャーの経験を通して培った専門的知識・経験や持論を基に介護の情報を発信していきます。ご家庭で業務や施設教育に役立てて下さい。

一人の介護のプロに纏わる一つの施設のお話し『プロフェッショナル介護人』木下博之

今回は 木下博之さんの著書『プロフェッショナル介護人』を紹介します。 

本書は施設運営を通して出会った ”プロフェッショナル介護人=布施君江さん(施設長)” と布施君江さんとの関りで得た著者自身(社長)の介護論を自身の施設でのエピソードを基に語られている内容になっています。

 

最初に読んだ印象としては施設・上司・利用者共に理想形で非の打ち所のない施設運営像があり、失敗続きで試行錯誤の連続の私の環境と懸け離れており 個人的には 少し入り込みにくく感じました。しかし、内容はどれも正論であり ”理想的な上司モデル・環境モデルの参考として” ”当たり前の基準を見出す物差しとして” 自分の取り巻く環境を見直す良い材料に役立つのではと感じました。

 

理想的な上司に恵まれていない方、理想的な上司・施設を目指している方 など使える1冊になるのではないでしょうか。

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 この本の説明

Amazon紹介欄

 本書は、今現在介護現場で働く人やこれから働きたいと考えている人に向け、
「介護のプロフェッショナル」として人生のキャリアを築いていくための心構えが書かれています。
全体は「現場」と「経営」の双方の視点から
「メンタル」「サービス」「知識」「組織づくり」の4項目に分けられ、テーマ毎に読みやすい構成となっています。

現在介護現場で奮闘する人たちへのエールになること、
そして、これから介護業界へ飛び込んでくる人たちの支えになること。
また、介護職に従事する人のみならず、現在ご自宅で、ご家族の介護を行っている方々へも
「介護の尊さと素晴らしさ」を伝えたいという著者の思いが込められています。
遠くない将来、いつかご高齢になられるご家族がいらっしゃる方にも是非読んでいただきたいと思います。

ジャンルとしては実用書になりますが、内容は対話形式に近い形で展開していくため、
また、人間的・日常的な喜怒哀楽に満ち溢れた身近なエピソードをふんだんに交えながら書かれていますので、
まるで小説やエッセイを読むかのように一気に最後まで読み進み、読後はほのぼのとした温かい余韻が心に残ります。

本書の最後には、著者のかつての会社同僚でもあり、
ご家族の介護経験を有するジャーナリスト谷本有香氏と著者による
「これからの日本の介護のあり方、進むべき道」をテーマとした対談も収録されています。

はじめに
第1章 介護職でプロフェッショナルを目指すべき理由
第2章 まずは自らの「介護理念」を持つ。あるべき介護人の姿を描くことがプロへの第一歩【メンタル編】
第3章 介護はケアではなくサービス。ご利用者の感動と笑顔を生んでこそプロである【サービス編】
第4章 命を預かるプロとして介護現場のリスクマネジメントが不可欠【知識編】
第5章 一人では介護職は成り立たない。職場のモチベーションまで高めるのがプロの介護人【組織づくり】
第6章 〝プロフェッショナル介護人〟が業界の未来を支える

対談:ジャーナリスト谷本有香 ✕ 木下博之
おわりに:本当に幸せな8年間(布施君江)
あとがき
(参考)「遺言動画サービス『つたえる』」(特許出願中)について

 

書内著者紹介欄

木下博之
1970年生まれ。大阪府大阪市出身。慶應義塾大学卒業後、山一證券株式会社入社。会社自主廃業後、米国ジョージタウン大学ビジネス・スクール留学を経て、外資投資銀行勤務。その後、不動産アセットマネジメント会社勤務を経て、2008年本書の執筆協力者でもある布施君江との出会いをきっかけに老人ホーム運営会社を設立し、代表取締役就任。現在は太閣木下建設株式会社代表取締役副社長として、金融的視点も交えた総合的な不動産・建設業務に携わりながら、国内外含めた新規事業の開拓に取り組む。

この本を読んでみて

内容構成

 基本的な内容構成は ”Amazon紹介欄” で充分に説明されているので、今回は私が個人的に感じた内容の所感を話します。

 

 本書は一貫として施設長である布施君江さん施設の社長であり著者である木下博之さんの福祉論・介護論・指導論を実際の施設運営のエピソードに乗せて紹介されています。

出来過ぎかなと思うほど ”社長・施設長の思いが展開できている施設” がそこにあり、ドロドロとしたモノは一切感じさせられませんでした。(ホントは言えない苦労もあるのかも…)

 

又、著者が理解が柔軟なのか、布施君江さんの説得力のある介護論のせいなのか、高学歴の企業経営者で福祉•介護について ここまで柔軟に把握できてる人は残念ながら僕の周りで まだ出会った気がしません。

 

本書の内容がすべて事実なら それなりに試行錯誤や大変さはあるものの悔しいほど施設としては成功しているのではないかと思いました。(多少決め打ち感はあるものの正論で前向きな展開が印象でした)

 

心に残った内容

心に残った内容①『看取り•死を意識し介護する』

 ”現在 提供しているサービスの質” や ”現状での最善の介護方法” に注力し介護を考えていくだけでは限界や盲点がある事をエピソードを通して書かれていました。 

 

”介護の仕事はただ厳しく、向き合うことになる入居者の死はとても悲しいものである” と考える世界からは本当の介護は生まれないと話されており、共に「良かったね」と ”心穏やかな別れを作り上げる事” こそが目指すべき介護と述べられてました。

 

たしかに私自身「今の課題に対してどう取り組むべきか」との考えは全ての入居者に持ちますが、全ての入居者に対して看取り・死は意識してはおらず、新たに考え方を取り入れる事で より良い形でのケアサービスが展開できるのでは…と、参考にしようと考えました 。

 

心に残った内容②『介護はスピードでも効率でもない』

 本書では介護の世界は一般企業のように生産性だけで業務の質を測ることができない、

一人一人に合わせて丁寧な介助を行っているのであれば、それは一概に遅いと断定すべきではない、しかし限られた介護力の中で実施していく中で「やさしさも、効率も」との考え方が重要と書かれていました。

 

忙しい介護現場では効率を重視する風潮になりがちですが…

 個人的には入居者主体での考えで答えが出ると思っており ケアでの直接サービスを受けている入居者の裏に「ケアを待っている」という負のサービスを受けている入居者がいる事、を考えればと質と効率バランスのが取れると考えており、とても共感させられた内容でした。

 

心に残った内容③『介護には感動がある』

 親の介護の為に退職・介護鬱・介護苦による自殺など、巷の話しやニュースを通して介護取り巻く印象として悲劇の元凶ように語られ、確かに大変なことも多いが「介護ほど自分の欠点を遠慮なく見せてくれる仕事は他になく、介護は人を成長させる喜びのある仕事」と介護に対しての良さを話されています。

 

介護は生活・医療・看護・薬剤・リハビリなどに精通しており どの知識・技術も深く掘り下げれば限りなく その全てがリアルに生活に繋がっており なにより習得した知識・技術は対象者の喜びに直結する。

私自身、取り組み方ひとつで結構やりがいがあり感動に繋がる仕事だと思いますが、確かに負の印象が強いのは否めない気がします。

良い印象への転換には より多くのプロフェッショナル介護人が必要などだと感じました。

 

まとめ

この本を一言で説明するなら ”布施君江さんの介護論”

 

著者の木下博之さんが「この人こそ、プロフェッショナル介護人!」と考える布施君江さんの介護論 又、布施君江さんとの関わり通して学んだ著者や後輩介護士達の介護論を実際の施設運営を通して紹介されてました。

 

 理想の介護論モデルとして、”上司からの教育を受けていると想定して読んでみる” ”後輩や部下への教育の参考に読んでみる” など、それぞれの場面で役立つ一冊ではないかと思いました。 

 

今回紹介した本はこちらです。

介護職の方のための転職・就職支援【マイナビ介護職】