あたりまえ!が、あたりまえじゃない?『まちがいだらけの老人介護』船瀬俊介
今回は 医療ジャーナリストの船瀬俊介さんの著書『まちがいだらけの老人介護』を紹介します。
この本を一言でいえば ”過激な福祉論!”
日本の介護現場における慣習的な考え方に対して 諸外国の福祉の現場と比較し常識に囚われない視点で 固定概念に一石を投じる内容になってます。
福祉・高齢者医療の仕事に行き詰まりや疑問を感じている方や、福祉に対して新たな考え方や多角的な視点を求めている人にとって 刺激となる一冊だと思います。
この本の説明
Amazon紹介欄
著者について
食品・医療・環境問題に取り組むジャーナリスト。日本消費者連盟の活動に参加、「消費者レポート」の編集などを経て、独立。
1980年代には化粧品の危険性を、1990年代には電磁波の問題を、2000年代には抗ガン剤の無効性をいち早く告発し、時代の一歩先を行く視点がつねに注目を集めている。
2000年5月に長女を医療ミスにより失う。
--このテキストは、tankobon_softcover版に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
この本を読んでみて
内容構成
海外の老人は日本の老人より『元気』で『明るい』印象にある事から日本の介護・福祉に対して疑問を抱いた事から始まり…
本書は一貫して ”ひとに頼るな おのれに頼れ!” の考えのもと著者の視点から独自の裏付けを基に ”食事について” ”運動について” ”入浴について” ”薬・治療について” ”老人の性について” ”介護の現場について” など 18章82つの様々な視点での 現在、実施されているケアや介護・現在の日本の考え方や、それを基にした体制や提供されているサービス に対して科学的な根拠を基に自身の考察を ぶつける形になってました。
各章の最後ごとに ”おねがい” と題して箇条書きで 章で筆者が述べたかった事のまとめが分かり易くかかれていました。
心に残った内容
今回は82の話しの内 心に残った内容を3つ紹介します。
心に残った内容①『食べさせすぎ&お肉食べすぎ』
本書では食事の量と内容に対し苦言を呈しています。
多少の空腹状態の健康に対する必要性から ファスティング(断食)要素の重要性を説明されており『たくさん摂取する事=良い食事介助』との固定概念が介護される老人を苦しめている事に繋がる事、又、食事の必要性は本人の中にあり必要性が出れば自然と食欲も出てくるし 『食欲の低下=自然な死』 として捉える視点を紹介されていました。
個人的には認知の側面もあり一筋では考えにくいモノでは…とも思いながらも、完食にこだわる風潮など・・・著者の苦言に対し思う節が多々ある事も事実でした。
又、食事内容面でも動物食(肉類・乳製品)は一般的に言われるほど体に良いわけではなく これからは完全な菜食を薦めており その為には『ま(豆)・ご(ゴマ)・は(ワカメなどの海藻)・や(野菜)・さ(魚)・し(シイタケなどの茸類)・い(芋)』を例に日本食を積極的に摂る事を紹介されています。
危険なほど低カロリーの菜食主義者が長きにわたり元気に過ごしている事実からカロリー理論にも疑問を投げかけ、加えて 肉類の体に対する悪影響や牛乳やチーズなどの乳製品の悪影響を 様々な研究データで裏付けしており 興味深い内容になってました。
心に残った内容②『ただ、弱らせ、死なせる老人介護』
日本は高齢者に対し過介護であり 海外の国に比べて高齢者の寝たきり率が高いとの事でした。
本書では ”ハンドグリップ筋トレ” や ”アイソメトリックス筋トレ” など具体的な運動方法・著者の薦めるアクションプランも 介護を提供する場面 や 年を取っていく自己に対しての場面 に合わせて 丁寧に紹介してました。
個人的な感想として実際に取り入れるには無理があるモノもあったものの 今後 参考にしていきたいと感じました。
心に残った内容③『隠れた死因は薬死?』
”痛み” に対したり ”血圧自体” に対したりと症状への対処的な投薬は一時的な要素が高く長期的な目で見ると自己治癒力を阻害し状態を悪化させる要因になり 状態の悪化が更なる薬剤の投与を招き負のサイクルに繋がると本書では述べられてました。
食事介助面でも共通する考えですが、筆者は自然体を基に考えおり、高齢者自身は ”終末の自宅での老衰” の希望が多いものの ”コードやチューブまみれになってる延命治療=スパゲッティ治療” や ”大量投薬・大量点滴の治療というより拷問” と本書では表現している現在日本で行われている行為は 高齢者自身が望み筆者が推奨する自然な形とは最もかけ離れていると懸念している。又、医療の利権が見え隠れしており 日本での医療体制が阻害因子になっていると過激に話されています。
個人的には 認知症対応も含め高齢者に対して よりナチュラルな対応なが適していると考えている自分としては 高齢者として治療や終末医療を受ける側になった身で考えると現在の対応に対しては抵抗があり違和感を感じており、過激すぎる内容にはなってましたが共感する部分が多かった印象でした。
まとめ
私 個人的には面白く読めました。
最初は内容も過激で刺激が強くゴシップ紙を読んでる感覚に近かったのですが、内容には一つ一つに裏付けもあり 説得力を持っており 筆者の世界に引き込まれました。
内容が過激なだけに感想は賛否両論に分かれるのではないかと思いますが、
本書で述べられている『ひとに頼らず、おのれに頼れ』とは ”高齢者の自立の力” を促す事に加えて 既存の情報を鵜呑みにせず ”自分の感覚で判断する” 事も表しており 本書の情報を基に判断するのは 結局、自分自身だと感じました。
”新たな価値観が欲しい人” や ”多角的な視点を求めている人” はぜひ読んでみて下さい。
今回紹介した本はこちらです。