おむつを中心に介護を変えてみてはいかがでしょうか?『おむつを外し尿失禁を改善する』竹内孝仁・藤尾祐子
今回は 竹内孝仁さんの著書『おむつを外し尿失禁を改善する』を紹介します。
本書は排泄を ”医学的・科学的な視点” ”使用者の視点” ”倫理的・合理的な視点” など多角的な分析することから ”脱おむつ” の実現への取り組み方を紹介されています。
本書の面白いところは ”排泄介護” から被介護者を取り巻く介護環境全体を考えており、提唱されている理論が理想的なライフスタイル・介護環境まで広がります。
注目すべきは、理論を実践した施設で ”おむつゼロ” の実績結果を出している事例を数多く輩出して信憑性を高めている点です。
本書を例えて言うなれば、家を建てるコンセプトを「リビングを中心に~」とか「キッチンを中心に~」とか組み上げていく様に、介護全体を ”排泄” を中心に考えていく発想が 個人的に多くの事を気付かせてくれました。
現在の排泄介護に疑問を持っている方や排泄介護の知識を深めたい方・「介護の発想が凝り固まっってるな」と行き詰っている方など、是非とも読んで貰いたい一冊です。
この本の説明
Amazon紹介欄 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
竹内/孝仁
1941年東京生まれ。日本医科大学卒業後、東京医科歯科大学助教授、日本医科大学教授を経て、2004年より国際医療福祉大学大学院教授。1973年から特別養護老人ホームにかかわり、おむつはずし運動などを展開。80年代から在宅高齢者のケア全般にかかわる。日本ケアマネジメント学会理事、パワーリハビリテーション研究会会長など多数の委員等を歴任
藤尾/祐子
介護老人保健施設ラ・サンテふよう看介護長、国際医療福祉大学大学院博士課程(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
この本を読んでみて
内容構成
この本の構成は3章構成で成り立っています。
第1章では、『介護は理論である』と題し、”おむつ” が介護者・被介護者にとって いかにデメリットが内在しているのかを筆者が独自の視点で分析、
- 物理的は不快感。
- おむつかぶれ (おむつ皮膚炎)
- 離床と活動の低下。
- 認知症の進行。
- 深刻な介護負担の発生 (在宅)。
- 介護職を専門職から遠ざける。
- オムツ交換は学ばない介護職をつくる。
- チームワークのできない職員をつくる。
の、8つの要素で説かれています。
残りの 第2章 第3章 で、”脱おむつ” へのアプローチ方法を説いており、
まず第2章では『さあおむつ外しをはじめよう』と題して ”おむつゼロ” (本書では「排便」をおむつまたは類似品で処理することなく一般トイレまたはポータブルトイレで行う事 とされている) を掲げ、一日の実施回数も少なく取り組みやすい『排便』からアプローチを!と、本書のタイトル前半の ”おむつ外し” に対しての取り組みが書かれていました。
そして、”脱おむつ” へのポイントを『おむつ外しの四大ケア』と表し、
- 1日1500ml、もしくは これ以上の水分
- 下剤の中止と 下剤に代わる生理的 排便のケア
- 歩行訓練
- トイレでの排泄
4つ説明されていました。
更に実際の施設での取り組みや実例のデータと結果を紹介され本書の理論・実施方法で ”おむつゼロ施設”(本書では全ての入所利用者で一度は ”おむつゼロ” を達成した施設 とされている) が続出している事を紹介されています。
続いて第3章では本書タイトルの後半『尿失禁を改善する』と題して 今度は『排尿』に関しての ”脱おむつ” への分析・アプローチを説明されいました。
その戦略として、
- 排尿回数を介護者・被介護者 双方に負担感の高い夜間から日中にシフトする取り組み『夜間排尿回数を少なくする(0~1回程度に)』
- 効率の悪い 「排尿誘導」 に焦点を当てず 「尿意の回復」 に焦点を当てる取り組み 『回数の増えた日中排尿には「尿意」を回復させるアプローチを行う』
の2点を挙げられてます。
事例として 老人保健施設での実践研究の内容と結果が述べられていました。
印象としては、様々な裏付けを基にした理論と実際の施設での実践での結果で構成されており本誌の表紙に挙がっている通り まさに『理論と実践』でした。又、 ”おむつ・排泄環境に対しての全体的な理論や筆者の考え” ⇒ ”排便に対してのアプローチの実践方法と根拠・事例紹介” ⇒ ”排尿に対してのアプローチの実践方法と根拠・事例紹介” と構成もシンプルで分かり易くとても理解しやすい内容でした。
おすすめポイント
ポイント①『説明に根拠があり、分かり易い!』
”おむつ皮膚炎のメカニズム” ”立位・座位での肛門直腸角の比較” などの科学的・医療的知識 ”施設での実態調査のデータ” ”個別の実例” などの現場での情報 など多角的な分析にて総合的に評価・実証しており、どの様な根拠が基での取り組みか がとても分かり易かった。
ポイント②『実例で、より現実味UP!』
実例で具体性を裏付けしており説得力があった。よくありがちな ”理想からの机上の空論” でない事が実例を通して述べられており 本書の取り組みが実現可能である事の証明になっている様に思えました。
ポイント③『全体からの排泄⇒排泄からの全体』
”排泄環境” から ”生活全般” を捉える考え方は、シンプルかつ合理的で、よくありがちな「生活から排泄を考え行き詰る ケース」など介護全般の様々な問題解決の糸口に繋がるのではないかと感じました。
まとめ
介護する側・される側にとって ”排泄” は最も重要な事柄と言っても過言ではなく、排泄が生活全般に影響を及ぼす事も多いのではないかと思います。排泄から介護全体を捉える発想での環境改革も満更ではないと個人的に感じました。
排泄環境に悩まれている方・疑問に感じている方は基より 知識として重要な要素も盛り沢山あり排泄の知識を教養として深めたい方にも 是非読んで貰いたい一冊だと思いました。
今回紹介した本はこちらです。